ギリシャ随想シリーズ (13)プラトニック・ラブ | |
古代ギリシャでは男性同士の恋愛が盛んであったことは有名である。 現在で言う同性愛と少々異なる点は、恋愛の対象とされたのが 専ら少年であったということである。 古代ギリシャの男たちは少年期から主に男たちだけの世界において生活し、 同年輩の異性に接することも少なかった上に、また力強い精神と 均整の取れた若い肉体を至上の美と捉える独特の観念を持っていたことも その風潮を助長する要因になったのであろう。 男たちは真心を捧げて少年に求愛した。少年愛とも呼ばれるそれは、 年長者が少年を寵愛する傍ら、教え導くという側面も持っていたため、 その主要な意味は精神的・道徳的なものであったともされるが、 そこに肉体的要素が含まれていたことも否定できない。 しかし、古代ギリシアにおいてはホメロスの時代からそういった同性間の 愛情・肉体関係は決して異常でも不自然でもなく、むしろ女性に対して 性欲を持つのと全く同様に健康的な大人の男にとっては当然のことと みなされていた。 そればかりか、ギリシア人たちは同性愛には徳性と廉恥心とを涵養し、 男たちをより勇敢で高潔にするきわめて貴重な働きがあるとすら考えていた。 実際、テーベで結成された恋人同士のみからなる軍隊は 近隣に鳴り響くほどの強さをみせた。 また、かの有名な哲学者のソクラテスやプラトンなども 美少年を愛好していたことは有名な事実である。 そして、プラトンは、こういった同性愛を肉欲と切り離すことによって、 少年の美しさに反映された「美そのもの」への憧れに純化させ、 至高で至醇な美の力による霊魂救済の秘儀へと昇華させた。 これがいわゆる「プラトニック・ラブ」である。 プラトニック・ラブは、そもそもは男同士の愛から生まれた観念なのである。 (2004.6.29) |
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