ハマっ子ノスタルジー

『洋画ファン』
(第10話)
                              広瀬裕敏

 初めて自分の小遣いで観た映画は、「続夕陽のガンマン」ほかマカロニウエスタン3本立てだった。中学1年生のとき小学校の友達と観た。
 同じ頃、NET(現TV朝日)で土曜映画劇場が始まった。(始めの頃は土曜日だった)淀川長治が番組の始めと終わりにでてきて解説をした。既に「ララミー牧場」でおなじみの顔だった。
 「それではまたお会いしましょうね。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。」おなじみのフレーズを聞いてから床に就いた。
 中学2年生のとき映画鑑賞が趣味になった。ほどなく各テレビ局とも洋画劇場を開始し、劇場での鑑賞と合わせて月30本観ることを目標にした。
 すべて洋画だった。ある転機に完全な邦画ファンになるのだが、それは次の機会に述べる。
 月刊誌「スクリーン」が愛読書になった。1年に1度の読者ファン投票で、女優第1位は常にオードリーヘップバーンであった。「ロミオとジュリエット」封切り後何年かはオリビアハッセーが第2位をキープした。
 そういえば、文化放送のリクエストによる洋楽ベスト10では、十数年間「エデンの東」のテーマ曲が1位だった。恐ろしい固定ファンである。
 最近自宅の押入れで、当時のロードショーのパンフレットの束を発見した。もちろん映画を観るたびにパンフレットを買っていたわけではないが(むしろ買わないほうが多かったが)、それらの映画は、なんでこんな作品を見たのだろうという駄作も含めて、懐かしく記憶によみがえった。
 列挙してみる。
「ベンハー」「大脱走」「Ifもしも」「雨の訪問者」「真夜中のカーボーイ」「マイフェアレデイ」「世にも怪奇な物語」「栄光の5000キロ」(邦画も少しは観ていたのだ)「レーサー」「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫の芥川賞作品)「暗くなるまでこの恋を」「幸せはパリで」(ドヌーブが好きだったのだろうか)「愛と死と」「ブリット」「いちご白書」(荒井由美と同世代なのだ)「サウンドオブミュージック」「俺たちに明日はない」「MASH」「失われた男」「ウエストサイド物語」「ボブとキャロルとテッドとアリス」「貴族の巣」(ロシア映画)「ロミオとジュリエット」 時代を反映してアメリカンニューシネマの作品を多く観た。「卒業」「イージーライダー」「明日に向かって撃て」の類である。ベトナム戦争という影はあっても、まだまだハリウッド映画は輝いていた。
 高校生になり、ロードショーではなく、名画座を愛用するようになった。渋谷全線座は確か2本立て2百円程度だった。
 私にとって映画は一人で観るものだった。

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