第1葉 |
君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く |
2011年10月5日 |
第2葉 |
夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ |
2011年10月11日 |
第3葉 |
風に散る花橘を袖に受けて君が御跡と思ひつるかも |
2011年10月17日 |
第4葉 |
橘の下に吾を立て下枝取り成らむや君と問ひし子らはも |
2011年10月24日 |
第5葉 |
かくしてそ人の死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに |
2011年11月1日 |
第6葉 |
君が行く海辺の宿に霧立たば吾が立ち嘆く息と知りませ |
2011年11月7日 |
第7葉 |
朝寝髪われは梳らじ愛しき君が手枕ふれてしものを |
2011年11月14日 |
第8葉 |
隼人の名に負ふ夜声いちしろくわが名は告りつ妻と恃ませ |
2011年11月21日 |
第9葉 |
家にあれば妹が手まかむ草枕旅に臥せるこの旅人あはれ |
2011年11月28日 |
第10葉 |
妹と言はば無礼し恐ししかすがに懸けまく欲しき言にあるかも |
2011年12月5日 |
第11葉 |
鳰鳥の葛飾早稲を饗すともその愛しきを外に立てめやも |
2011年12月12日 |
第12葉 |
雨も降り夜もふけにけり今さらに君行かめやも紐解け設けな |
2011年12月18日 |
第13葉 |
明日よりは恋ひつつもあらむ今宵だに速く初夜より紐解け吾妹 |
2011年12月24日 |
第14葉 |
相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後へに額づくがごと |
2012年1月2日 |
第15葉 |
信濃なる千曲の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ |
2012年1月8日 |
第16葉 |
駿河の海磯辺に生ふる浜つづら汝をたのみ母に違ひぬ |
2012年1月16日 |
第17葉 |
上野安蘇の真麻群かき抱き寝れど飽かぬを何どか吾がせむ |
2012年1月22日 |
第18葉 |
ありつつも君をば待たむうちなびくわが黒髪に霜のおくまで |
2012年1月29日 |
第19葉 |
馬買はば妹歩行ならむよしゑやし石は履むとも吾は二人行かむ |
2012年2月4日 |
第20葉 |
燈の影にかがよふうつせみの妹が笑まひし面影に見ゆ |
2012年2月11日 |
第21葉 |
吾妹子が植ゑし梅の樹見るごとにこころ咽せつつ涙し流る |
2012年2月18日 |
第22葉 |
朝去きて夕は来ます君ゆゑにゆゆしくも吾は嘆きつるかも |
2012年2月25日 |
第23葉 |
彼方の赤土の小屋に小雨降り床さへ濡れぬ身に副へ吾妹 |
2012年3月3日 |
第24葉 |
相見ては面隠さるるものからに継ぎて見まくの欲しき君かも |
2012年3月10日 |
第25葉 |
恋ひ死なば恋ひも死ねとか吾妹子が吾家の門を過ぎて行くらむ |
2012年3月17日 |
第26葉 |
浅茅原小野に標結ふ空言も逢はむと聞こせ恋の慰に |
2012年3月24日 |
第27葉 |
偽りも似つきてそ為る何時よりか見ぬ人恋ひに人の死する |
2012年3月31日 |
第28葉 |
紅の裾引く道を中に置きてわれか通はむ君か来まさむ |
2012年4月7日 |
第29葉 |
秋山の樹の下隠り逝く水のわれこそ益さめ御思ひよりは |
2012年4月14日 |
第30葉 |
天地にすこし至らぬ大夫と思ひしわれや雄心も無き |
2012年4月21日 |
第31葉 |
健男の現し心もわれは無し夜昼といはず恋ひしわたれば |
2012年5月5日 |
第32葉 |
大夫が伏し居嘆きて造りたる垂り柳の蘰せ吾妹 |
2012年5月12日 |
第33葉 |
ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし今はわが名は惜しけくも無し |
2012年5月19日 |
第34葉 |
真袖もち床うち払ひ君待つと居りし間に月かたぶきぬ |
2012年5月26日 |
第35葉 |
眠も寝ずにわが思ふ君は何処辺に今夜誰とか待てど来まさぬ |
2012年6月2日 |
第36葉 |
わが故にいたくな侘びそ後遂に逢はじと言ひしこともあらなくに |
2012年6月9日 |
第37葉 |
人言を繁み言痛み己が世にいまだ渡らぬ朝川渡る |
2012年6月16日 |
第38葉 |
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る |
2012年6月24日 |
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紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも |
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第39葉 |
香具山は畝火を愛しと耳梨と相あらそひき… |
2012年6月30日 |
第40葉 |
あしひきの山のしづくに妹まつとわれ立ちぬれぬ山のしづくに |
2012年7月7日 |
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吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを |
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第41葉 |
君が行く道の長てを繰り畳ね焼き亡ぼさむ天の火もがも |
2012年7月15日 |
第42葉 |
帰りける人来れりと言ひしかばほとほと死にき君かと思ひて |
2012年7月21日 |
第43葉 |
白妙の吾が衣手を取り持ちて斎へわが背子直に逢ふまでに |
2012年7月29日 |
第44葉 |
塵泥の数にもあらぬわれ故に思ひわぶらむ妹がかなしさ |
2012年8月4日 |
第45葉 |
馬柵越し麦食む駒のはつはつに新肌触れし児ろし愛しも |
2012年8月11日 |
第46葉 |
玉垂の小簾の隙に入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ |
2012年8月17日 |
第47葉 |
馬柵越しに麦食む駒の罵らゆれどなほし恋しく思ひかねつも |
2012年8月24日 |
第48葉 |
かくのみし恋ひば死ぬべみたらちねの母にも告げつ止まず通はせ |
2012年8月31日 |
第49葉 |
たらちねの母が手放れかくばかりすべなき事はいまだ為なくに |
2012年9月7日 |
第50葉 |
しなが鳥安房に継ぎたる梓弓周淮の珠名は胸別のひろき吾妹… |
2012年9月13日 |
第51葉 |
われも見つ人にも告げむ葛飾の真間の手児名が奥城処 |
2012年9月21日 |
第52葉 |
ま遠くの雲居に見ゆる妹が家にいつか到らむ歩め吾が駒 |
2012年9月28日 |
第53葉 |
利根川の川瀬も知らずただ渡り波に遭ふのす逢へる君かも |
2012年10月5日 |
第54葉 |
明日香川下濁れるを知らずして背ななと二人さ寝て悔しも |
2012年10月12日 |
第55葉 |
筑紫なるにほふ児ゆゑに陸奥の可刀利少女の結ひし紐解く |
2012年10月19日 |
第56葉 |
うち日さす宮のわが背は倭女の膝枕くごとに吾を忘らすな |
2012年10月26日 |
第57葉 |
乎久佐男と乎具佐助男と潮舟の並べて見れば乎具佐勝ちめり |
2012年11月2日 |
第58葉 |
筑波嶺の嶺ろに霞居過ぎかてに息づく君を率寝てやらさね |
2012年11月9日 |
第59葉 |
何と言へかさ寝に逢はなくに真日暮れて宵なは来なに明けぬ時来る |
2012年11月17日 |
第60葉 |
梓弓欲良の山辺の繁かくに妹ろを立ててさ寝処払ふも |
2012年11月23日 |
第61葉 |
あらたまの伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ寝を先立たね |
2012年11月30日 |
第62葉 |
武蔵野の草は諸向きかもかくも君がまにまに吾は寄りにしを |
2012年12月8日 |
第63葉 |
吾妹子と二人わが見しうち寄する駿河の嶺らは恋しくめあるか |
2012年12月14日 |
第64葉 |
橘の下吹く風の香ぐはしき筑波の山を恋ひずあらめかも |
2012年12月21日 |
第65葉 |
筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹そ昼も愛しけ |
2012年12月28日 |
第66葉 |
あり衣のさゑさゑしづみ家の妹に物言はず来にて思ひ苦しも |
2013年1月4日 |
第67葉 |
吾ろ旅は旅と思ほど家にして子持ち痩すらむわが妻かなしも |
2013年1月13日 |
第68葉 |
おくれ居て恋ひば苦しも朝狩の君が弓にもならましものを |
2013年1月20日 |
第69葉 |
防人に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思もせず |
2013年1月26日 |
第70葉 |
難波道を行きて来までと吾妹子が着けし紐が緒絶えにけるかも |
2013年2月2日 |
第71葉 |
わが妻も絵に描きとらむ暇もが旅行く吾は見つつしのはむ |
2013年2月8日 |
第72葉 |
父母が頭かき撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる |
2013年2月17日 |
第73葉 |
常陸さし行かむ雁もが吾が恋を記してつけて妹に知らせむ |
2013年2月23日 |
第74葉 |
大君の命畏み愛しけ真子が手離り島伝ひ行く |
2013年3月1日 |
第75葉 |
籠もよみ籠持ち掘串もよみ掘串持ちこの丘に菜摘ます児… |
2013年3月8日 |
第76葉 |
隠口の泊瀬小国に妻しあれば石は履めどもなほし来にけり |
2013年3月15日 |
第77葉 |
隠口の泊瀬小国に夜這ひ為すわが天皇よ… |
2013年3月22日 |
第78葉 |
淡路の野島の崎の浜風に妹が結びし紐吹きかへす |
2013年3月29日 |
第79葉 |
小竹の葉はみ山もさやに乱げどもわれは妹思ふ別れ来ぬれば |
2013年4月5日 |
第80葉 |
恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば |
2013年4月12日 |
第81葉 |
吾妹子は常世の国に住みけらし昔見しより変若ちましにけり |
2013年4月19日 |
第82葉 |
夕されば君来まさむと待ちし夜のなごりそ今も寝ねかてにする |
2013年4月26日 |
第83葉 |
わが背子が著せる衣の針目落ちず入りにけらしもわが情さへ |
2013年5月3日 |
第84葉 |
難波人葦火焚く屋の煤してあれど己が妻こそ常めづらしき |
2013年5月11日 |
第85葉 |
毎年に梅は咲けどもうつせみの世の人君し春なかりけり |
2013年5月17日 |
第86葉 |
春日すら田に立ち疲る君はかなしも若草の妻なき君が田に立ち疲る |
2013年5月25日 |
第87葉 |
愛しと思ふ吾妹を夢に見て起きて探るに無きがさぶしさ |
2013年6月7日 |
第88葉 |
赤らひく膚には触れず寝ぬるとも心を異しくわが思はなくに |
2013年6月15日 |
第89葉 |
凡ならば誰が見むとかもぬばたまのわが黒髪を靡けて居らむ |
2013年6月21日 |
第90葉 |
人に見ゆる表は結びて人の見ぬ裏紐あけて恋ふる日そ多き |
2013年6月29日 |
第91葉 |
わたつみの沖つ玉藻の靡き寝む早来ませ君待たば苦しも |
2013年7月6日 |
第92葉 |
刈薦の一重を敷きてさ寝れども君とし寝れば寒けくもなし |
2013年7月21日 |
第93葉 |
わが背子を何処行かめとさき竹の背向に寝しく今し悔しも |
2013年8月9日 |
第94葉 |
君なくはなぞ身装はむ匣なる黄楊の小櫛も取らむとも思はず |
2013年8月25日 |
第95葉 |
恋草を力車に七車積みて恋ふらくわが心から |
2013年9月6日 |
第96葉 |
わが情焼くもわれなり愛しきやし君に恋ふるもわが心から |
2013年9月20日 |
第97葉 |
うち日さす宮道を人は満ち行けどわが思ふ君はただ一人のみ |
2013年10月4日 |
第98葉 |
思はぬに到らば妹が嬉しみと笑まむ眉引思ほゆるかも |
2013年10月11日 |
第99葉 |
人も無き国もあらぬか吾妹子と携ひ行きて副ひておらむ |
2013年10月18日 |