さくら野歌壇-2003-

真面目、冗談、何でもござれ。投稿歓迎!

2002年度分   2001年度分


 12月10日(旧暦11月17日)の歌について
 お叱りをいただきました。私は秋の月を詠んだ歌を
 紹介したのですが、旧暦11月は秋ではない、暦の
 上では冬であると。

 ご指摘の通りであります。まちがえました。身の
 回りの気候がとても冬とは思えず、まだ秋のつもり
 でいました。すみません。

 では、冬の歌でいきましょう。
 竹の葉に あられ降るなり   
  さらさらに 
   独りは寝(ぬ)べき心地こそせね
            (和泉式部)

 これは実にいい歌なのですが、暦の上で冬だから
 といって、まだあられも降っていないのに、ここで
 もちだすのはいかがなものか、と、またお叱りを
 受けそうです。

 暦の四季と実際の寒暖が合わないのは困ったもの
 ですね。

(2003.12.15. 歌麻呂)


 久しぶりに晴れた日が続きます。 
 今日は旧暦11月17日、月齢16。
 つまり秋の月がくっきり見えるころ。
 月が冴えわたるさまを詠んだ歌は数々あれど、
 その中から一つを選べと言われれば、

 白雲に はねうちかはし 飛ぶ雁の
  数さへ見ゆる 秋の夜の月
             (よみ人しらず)

 みなさんも今夜は空を見上げてください。

 (2003.12.10. 歌麻呂)

 秋蒸かし、じゃなかった、秋深し、であります。
 今回は百人一首から秋の歌を選びました。

  このたびは ぬさもとりあへず たむけやま
     もみぢのにしき かみのまにまに

 意味がよくわかりませんね。
 こういうときは編集長に聞きましょう。
 ハイ、編集長、この歌を解いてください。

(2003.12.01. 歌麻呂)

 (編集長:この歌は太宰府に流された菅原道真の作。神への
 贈り物である幣・・・ぬさ・・・を用意できず申し訳ない。だから、
 紅葉の錦で許してください、というのが一般的な解釈です。
 しかし、最近の研究から、興味深い事実が明らかになりました。
 それは、道真が愛人に多毛姫・・・タモヒメと読む・・・というのが
 いたそうで、道真はこの姫に一緒に太宰府へ同行してくれない
 かとしつこく頼んでいたそうなのです。
 ところが、多毛姫は意外に薄情で、約束の時間を過ぎても現れ
 ない。そこで詠んだのがこの歌なのだということです。
   
のたびは さもとりあへず むけやま
        
みぢのにしき みのまにまに
 「来ぬ多毛か・・・」という折り句に道真の暗澹たる気持ちが
 込められているのです。)

              

 東海の小島の磯の白砂に
  われ泣きぬれて
   蟹とたはむる

         啄木

 「東海の」といっても東海地方とは関係ない。
 「小島」はもちろん江ノ島なんかではない。
 そこは北海道の海岸である。啄木の足跡から
してそれは確かであり、現地に歌碑もある。
 だから、ここに出てくるカニはタラバガニだという
説がある。
 時は明治。乱獲もない時代である。そのころの
タラバガニは相当大きかった。
 巨大なカニと戯れる啄木。砂浜で相撲でもした
のだろうか。
 啄木研究の一層の深化が待たれる。

 (2003.9.07. 歌麻呂)
            


 今回は「菜の花やシリーズ」であります。
               つよし男

   

 菜の花や 士農工商 旧家あり
 菜の花や 変位抜刀かすみ斬り
 菜の花や タフでなくては生きていけない
 菜の花や 暗い渡世だなあ
 菜の花や たはむれせんとや生まれけん
 菜の花や おらは酔っぱらっただー
 菜の花や 山のあなたの空遠く
 菜の花や 根岸の里のわび住まい
 菜の花や 野にも山にもきららなり
 菜の花や ピッカピッカの一年生
 菜の花や 毎日鉄板の上で焼かれて
 菜の花や 君死にたまふことなかれ
 菜の花や それにつけても金の欲しさよ
 菜の花や 起て万国の労働者

 (2003.2.01. 投稿)


 「降る雪やシリーズ」補遺  つよし男

 降る雪や 貧しきときも 富めるときも
 降る雪や 昔はものを思はざりけり

 (2003.1.22. 投稿)


 降る雪や 明治は遠くなりにけり

 中村草田男のこの名作に敬意を表し、
「降る雪やシリーズ」をお贈りします。

             つよし男

     

 降る雪や 誰か故郷を想はざる
 降る雪や おわれて見たのはいつの日か
 降る雪や それにつけても金のほしさよ
 降る雪や 今日もコロッケ 明日もコロッケ
 降る雪や 起て万国の労働者
 降る雪や 先生 先生 それは先生
 降る雪や 22本のローソクを立て
 降る雪や 二人で聞いたボブディラン
 降る雪や 一人で聞いたホテルカルフォルニア
 降る雪や 京都の街がそんなにいいの
 降る雪や 清作の妻の山畑 若尾文子
 降る雪や 何ぞこの娘(こ)のここだ愛(かな)しき
 降る雪や この土手登るべからず 警視庁
 降る雪や それは言わんでおくれやす
 降る雪や あっしには何の関わりもござんせん
 降る雪や シャボン玉飛ばそ
 降る雪や 君死にたまふことなかれ

 (2003.1.19. 投稿)

 (編集長:今年初めての投稿です。ありがとう!)