さくら野歌壇-2007-

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 《王朝のメール 2》

 約束の夜、どしゃ降りになりました。
 「この雨では、ちょっと行けません」
 と男から連絡が来た。
 それへの女の返事。

   人ならば言ふべきものを
    待つほどに
     雨降るとては障るものかは

 意味は、”ちゃんとした男なら、こう言うで
 しょうに。「女が待っているから、こんな雨、
 どうってことないよ」と。”

 男はやむなく雨の中を出かけたでしょうな。
 この男はそれでいいとして、かなわないのは
 使いの者。王朝のメールを取り持つのは携帯
 ではなく使いの者。どしゃ降りの中を行き来させ
 られて。

 (2007.2.08. 歌麻呂)
                     


 《王朝のメール 1》

 秀れた和歌には言霊が宿っていると言われますが、
 いつもいつもそう難しく考えることはなく、昔の人は
 まるで気軽なメールのように使っていました。
 
   待ちわびて
    行く方も知らずなりにきと
     君来て問はばとくと答へよ

 和泉式部が男に送った歌です。
 ”こんなに待ってるのに、まだ来ないなんて。
 今から来たって、もう私、いないわよ。
 聞かれたら「行方不明です」と答えなさいって
 家の者に言っておくから。”
 というような意味ですが、こんな風にダラダラ書かず、
 31文字でビシッと決めるのが王朝メールの美学。
 こんな歌を送られた男は、あわてて飛んで行った
 ことでしょうな。

 (2007.2.06. 歌麻呂)
                      

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