蟹供養


(更新日:2001-05-16)


 京都と奈良の境に蟹満寺というお寺があります。ここで毎年
4月18日に蟹供養がおこなわれます。カニの殺生を生業とし
ている罪深い者たちが、この日、日ごろの罪を清めるのです。
 今年はわがさくら野貿易も法要に参列しました。おごそかに
お祓いを受け、カニの守護札と護摩符を頂戴しました。その法
力はきわめて強力で、これを持つ者、商売繁盛まちがいなしと
のこと。ありがたいことです。合掌。

                    (2001-05-08)

(注)下段の「朝日新聞」記事に登場する「千葉から参加した
   貿易会社社長」というのは、弊社の社長です。

蟹満寺のカニ

 「蟹満寺縁起」が語る乙女を助けたカニというのは、話の筋
からいって、沢ガニに相違ありません。実際、蟹満寺付近は
山水清く、今も沢ガニがたくさん棲んでいます。昔の人々は
きっと、カニといえば小さくて愛らしい沢ガニをイメージしたの
でしょう。
 「蟹満寺縁起」にせよ、「サルカニ合戦」にせよ、昔話の中の
カニはいつも可憐です。悪役にはならない。日本人の意識の
底にそういうイメージがあるものだから、タラバガニみたいな
巨大でいかめしいカニも、同じカニということで、なんとなく愛嬌
を感じてしまうようです。もしもタラバガニの姿がカニのイメージ
として古代人に刷り込まれていれば、カニは乙女を助けたりせ
ず、逆に乙女をいじめたかもしれないし、「サルカニ合戦」では
カニの方が勝つかもしれない。
                    (2001-05-10)

蟹の歌


 蟹満寺は千三百年前に創建され、「蟹満寺縁起」は九百年
前に書かれた「今昔物語」に登場します。いずれにしてもずい
ぶん昔です。古いということでいえば、日本最古の史書「古事
記」にもカニが出てきます。こっちは沢ガニではない。実にズワ
イガニであります。「古事記」の応神天皇の章に、天皇が琵琶
湖近くで歌った「蟹の歌」というのがある。

  このカニはどこのカニ?
  遠い敦賀のカニ
  横歩きにどこへ行くの?
  あっちの島へ

 歌はいつしか乙女を口説きはじめ、「娘さん、あなたの歯並
びはきれいだ」などと続いていくのですが、それはさておき、
当時すでに越前敦賀の越前ガニ(ズワイガニ)が、山を越え
琵琶湖を渡って畿内にもたらされていたことをこの歌は示し
ています。「蟹の歌」は、天皇が乙女の家で食事の接待を受け
たときの歌ですから、たぶん食膳にカニが供されていたのでし
ょう。ひょっとして生きたガニだったかもしれない。
 応神天皇は三世紀の人ということになっています。三世紀と
いえば邪馬台国の時代です。その時代に応神天皇が実在し
たかどうかは別にして、ずいぶん古くから、少なくとも「古事記」
が書かれた八世紀初頭には、海辺だけでなく古代都市でも
ズワイガニが食されていたわけです。もちろん貴賓の御馳走と
してでしょうが。
                     (2001-05-14)

カニと美人

蟹満寺縁起」の沢ガニも、「古事記」の越前ガニも、女性と
一緒に登場します。その女性は心やさしい人であったり美しい
人であったりする。なぜだかわからないけれど、女性とカニは
好一対をなすようです。そういえば現代でも、弊社にカニを注
文してくださる女性は心やさしい美人とお見受けいたします。

                    (2001-05-16)


(毛蟹と松葉蟹が奉納されてあります。分かりますでしょうか?)



(朝日新聞京都版)