カーステから流れているのは「圭子の夢は夜ひらく」。
♪赤く咲くのはけしの花、白く咲くのは百合の花、どう咲きゃいいのさ、この私♪
この声です、この声。声そのものが衝撃的な藤圭子。演歌は表情豊かに歌うのが普通。ところが、この人は無表情。ことさら眉根を寄せなくでも、このハスキーボイスが自然にのどから出てくる。だからこんなぶっきらぼうな歌い方ができる。
♪十五、十六、十七と、私の人生暗かった、過去はどんなに暗くとも、夢は夜ひらく♪
藤圭子はそのままの姿で、表情とたたずまいで、そしてその声で、聴く者を納得させる歌手であった。それが「無心」によるものだとは、彼女の死後発刊されたインタビューで知った。「有心」に戻れば無邪気な性格のほほえましい人であったということも。
(亮)
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