カーステから流れているのは「八月の濡れた砂」。曲の調子といい、石川セリの声といい、去りゆく引き潮のような雰囲気を漂わせています。昂揚が収まる夏の夕刻のけだるさ。
♪あたしの海をまっ赤に染めて、夕日が血潮を流しているの
あの夏の光と影は、どこへ行ってしまったの♪
この歌は映画の主題歌です。そのため損をしました。駄作映画でした。映画がヒットしなかったのは当然として、この歌も道連れになった。主題歌の宿命です。
でも、映画のことはもう忘れて、というか、映画を知らない人がほとんどでしょうから、歌だけを味わいましょう。歌だけで立派に通用します。
♪悲しみさえも焼きつくされた あたしの夏は明日もつづく♪
夏の光に重なるこの心象風景に、心の片隅がひそかに揺れる人は多いと思います。
(亮)
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