カーステから流れてくるのは尾崎豊の名曲「シェリー」。
♪シェリー、いつになれば俺は這い上がれるだろう
シェリー、どこに行けば俺はたどりつけるだろう♪
歌手は歌の世界を演じるが、しかし、この歌の問いかけは演技ではない。本心である。尾崎豊は本気でこの歌を書いたのだろう。そして本気で歌っている。彼には「いい歌」を作ろうという思いはおそらくなかった。いわば即興的に、ストレートに、自分の心を歌にした。その歌は彼自身の汗と涙と血で綴られている。しかも、ロックシンガーの咆哮と沢田研二の甘さが溶け合ったようなこの声。突如現れた彗星のように、ひとつの才能が時代を照らした。その星は流れ去ったが、光芒は消えない。現に今、カーステから放射されている。その放射を浴びて人は今も心を揺さぶられる。
(亮)
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