カーステから流れているのは八代亜紀の「愛の終着駅」。
愛する男が理由も告げず出ていってしまいました。男が夜汽車の中で書いたという手紙を受け取っても、女は泣くばかり。
♪あなた、お願い、帰ってきてよ、窓にわたしのまぼろしが、見えたら辛さをわかってほしい♪
悲しい歌です。男の身勝手に翻弄される女の歌です。しかし、この歌には救いがあります。それは八代亜紀の声。勢いがある。この女人なら男が帰って来なくても大丈夫。今は悲しくても大丈夫。そう思わせてくれるのです。彼女の声は哀切で、色っぽく、かすれた涙声にもなるけれど、どんな声調でも、たとえ小声でつぶやいても、そこには生命力の響きがある。悲しげな歌を、この声で歌う。それが八代亜紀の摩訶不思議な魅力です。
(亮)
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