カーステから流れているのは「ひと夏の経験」。
♪あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ♪
山口百恵がこれを歌ったのは、まだ手足も細い十五歳のころである。そんな子にこんな歌を歌わせた商魂への批判もわかるが、見事に歌い切った彼女を褒めるべきであろう。
♪愛する人に捧げるため守ってきたのよ、汚れてもいい、泣いてもいい、愛は尊いわ♪
たとえば八代亜紀がこのセリフを歌ったとしたら、聴く者が目を白黒させる。悩殺ボディと妖艶ボイスが邪魔をする。「プレイバックPart2」のころの山口百恵本人であっても、この歌はもう合わない。どこかはかなげで、それでいて芯の強そうな十代半ばの少女であったからこそ歌えたのだ。この歌はもう誰にも歌えない。あの時代にリアルタイムで聞けた人は幸せである。
(亮)
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