カーステから流れているのは薬師丸ひろ子の「セーラー服と機関銃」。
♪さよならは別れの言葉じゃなくて、再び逢うまでの遠い約束♪
人生には歌の空白がある。テレビや映画どころではなかったとか、日本にいなかったとか、何かの事情で何年分かの歌がスッポリ抜け落ちるのである。「セーラー服と機関銃」は、その空白の中にあった。後になってこの歌に接した。ヒットした頃の「時代の熱」を知らず、単に歌として聞いた。そして驚いた。薬師丸ひろ子はこんなにのびやかな声をしているのか、こんなに歌がうまいのかと。そういえば数年前、彼女は「潮騒のメモリー」という歌を歌った。同じ歌を小泉今日子も歌った。小泉今日子の歌いぶりはアイドルの風格があった。それに対して薬師丸ひろ子は、実にすなおに歌った。「セーラー服と機関銃」と同じであった。この女優は歌では演技をしない。この人の歌はそれでよいのだ。
(亮)
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