カーステから流れているのは「湖畔の宿」。多岐川舞子が歌っているが、元は高峰三枝子の歌である。日米開戦(1941年)の前年に発表され、戦時中大ヒットした。
♪山の淋しい湖に ひとり来たのも悲しい心 胸の痛みにたえかねて 昨日の夢と焚き捨てる 古い手紙のうすけむり♪
戦時下の歌にしては女々しい。敵性語もちりばめられている。♪ひとり占うトランプの青いクィーンの寂しさよ♪などは「ひとり占う花札の猪鹿蝶の嬉しさよ」とでも変えなければなるまい。などと思ってしまう人は、戦時中の日本を紋切り型に描く安直なドラマに影響されている。時代の風景というものは単色ではない。軍歌もあれば「湖畔の宿」もあった。
この曲は群馬県への贈り物でもある。群馬の歌を問われて思い浮かばない人は、この名曲を挙げればよい。この曲の「湖畔」は、群馬の名峰・榛名山、その山頂の榛名湖だという。
(亮)
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