カーステから流れているのは小林旭の「ギターを持った渡り鳥」。
♪赤い夕陽よ 燃え落ちて 海を流れてどこへゆく ギターかかえてあてもなく♪
昔はギターをよく弾いた。ギターを抱えて旅もした。しかし、もう長らく弾いていない。調子の狂った弦は取り替えれば済むが、指がもう動かない。それでもこの曲なら弾けそうである。テンポはスロー、コードは初歩的、古い歌はそこがありがたい。
ギター弾きには時代の美学がある。音楽の美学ではない。男の美学である。だから安物のギターでかまわない。この歌にもその美学がある。
♪ひとりぼっちのさみしさも ギターお前をつま弾けば 指にからむよ 汐の匂い♪
いま弾き語りで独り歌えば目頭が熱くなりそうだが、気にすることはない。ホコリをかぶった古いギターを取り出すことにした。ここはひとつ、ヘタな腕前を聞かせてやる。
(亮)
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