カーステから流れているのは小川知子の「初恋のひと」。
色っぽい人が、色っぽくなる前の遠い日の記憶を歌っているところに味があります。
♪野ばらをいつも両手に抱いて
朝の窓辺に届けてくれた♪
そんな気恥ずかしいことは男子高校生にはもうできません。彼女が思い返しているのは中学生か小学生でしょうね。
♪麦わら帽子のような匂いをさせて
私を海辺へつれて走った人よ♪
その男の子が、日に焼けたあの少年が、「初恋のひと」だと彼女は言うのです。これは男たちの心を打ちます。自分が少年であった日々を鮮やかに思い出します。あの時のあの少女が今そう言うのなら、俺にとってもあれはまちがいなく初恋であったと。彼女が「初恋のひと」を歌うと、男の方も「初恋のひと」を思わざるを得ないのです。
(亮)
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