カーステから流れているのは南沙織の「色づく街」。
♪街は色づくのに 逢いたい人は来ない♪
デビュー曲「17才」の二年後、二十歳前後の頃の歌声がこれである。曇りのない声、深みのある情感、その歌唱力はアイドル離れしている。歌いぶりもアイドル風ではない。本格的な歌手そのもの。いま振り返ると、ものすごい「アイドル」が登場したものだ。
♪あの日別れた駅にたたずみ ああ 青い枯葉かんでみたの♪
枯葉が青いというのは変だし、若い女の子がそれをかじるのも奇妙なのだが、彼女が歌うと何となく納得する。
♪人に押されて歩く夕暮れ ああ 貴方だけがそこにいない♪
曰く言い難いこの心境が、南沙織の歌声によって、聴く者の胸にストンと落ちる。
(亮)
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