カーステから流れているのは細川たかしの「矢切の渡し」。
♪つれて逃げてよ ついておいでよ 夕ぐれの雨が降る矢切の渡し
親のこころにそむいてまでも 恋に生きたい二人です♪
東京の柴又から、小舟で江戸川を渡り、千葉の矢切に逃げるのである。二人の駆け落ちを許さない親は、車を飛ばして国道6号線で江戸川を渡り、矢切で二人を捕まえればよい。だから舟でなく鉄道を使うべきである。金町駅から常磐線で北東に向かう。千葉、茨城、福島、宮城方面の、どこかの駅で降りれば、親はもう探しようがない。それなのにわざわざ舟で矢切に向かうのはおかしいのだが、変だなと誰も思わない。この恋は現代の話ではないとわかるからである。歌詞に時代を示す語句はないのに「明治あたりかな」と思ってしまう。節回しも古風だが、やはり「矢切の渡し」という曲名の文学的な香りがモノを言っている。
(亮)
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