カーステから流れる女声合唱は映画「女の園」(木下恵介監督)の挿入歌です。サウンドトラック版。つまり歌っているのは高峰秀子、岸惠子、久我美子などが演じる女子大生たち。
♪古き都に咲きし花の命は 祇王の夢ならずや 常盤ならずや
さらば吹けよ 峰吹く風よ 吹きて悲しみの歴史ぞ変えん♪
文語調の格調高い歌詞は古典を踏まえています。祇王も常盤も権力者平清盛に翻弄された女人です。女たちが味わったそんな悲しみの歴史を変えるのだというこの歌は、映画の舞台となった京都女子大学でよく歌われていました。おそらく今も。
この歌詞は平家物語を知らなければ理解できません。春日八郎「お富さん」は歌舞伎の知識がないとチンプンカンプン。橋幸夫「潮来笠」は利根川の水上交通が頭に入っていないと意味がつかめません。聴く側に予備知識を要求する歌は、その分、奥が深いと言えそうです。 (亮)
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