カーステから流れているのは「ひとり囃子」。小柳ルミ子である。彼女の声には切れ味がある。歌の彫りが深くなる。風景や心、その遠近や起伏をくっきりと彫り上げる。この曲もそうである。
♪去年の夏に見た時は あなたと私は揃いの浴衣
はぐれちゃ嫌よと手をつなぎ 冷たいラムネを飲みました♪
ところが今年の祇園祭は、その彼がいない。去年と今年の対比が鮮やかにして見事である。
この男は、わがままで生意気で強がりばかり言う女がイヤになり、「私ばかりか京都まで捨ててどこかへ行った」というのだが、行くところがないぞ。京都でも東京でもどこでも、女はわがままなのだ。女は小学生のときから生意気。「ひとり囃子」の女は珍しくも反省を知っている。それだけでもエライのに、それがわからぬとは、この男の行く末が案じられる。
(亮)
|