カーステから流れているのは「ロビンソン」。
スピッツの曲は不思議である。なつかしげな香りがする。昔どこかで聞いたような錯覚にとらわれる。やさしい単語ばかりで綴られているから聞きやすい。音の長短と小休止から成る二拍の連なりは日本詩歌の原型だが、古くからのその言語形式が曲の中に保存されている。まるで唱歌を思わせる。たとえば出だしの「新しい季節はなぜか切ない日々で」は、
♪あたーら・しー・きせーつ・はー・
なぜーか・せーつー・ないひび・でー
言葉を詰め込まず、無理に切らず、強引に引き延ばさず、日本語がもつ本来のリズムが生きている。それがメロディに溶け込んでいる。そのメロディは、つむじ風ではなくそよ風。急峻ではなくなだらか。そしてその声は、少し霞がかかっている。と、音楽的にはいろいろと言えそうだが、つまるところ作り手・歌い手の感性に、なつかしさのコアがあるのだろう。
(亮)
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