第2話 写真 おうちの中をチャトランの写真だらけにしたのは、くーちゃんです。 十四年前の雨の日、薄汚れた子ネコを抱えて持ち帰ったときのくーちゃんは、小学四年生でした。 「もとのところに捨ててきなさい」 お母さんに叱られても、泣いて離そうとしなかったあのときのように、くーちゃんは冷たくなったチャトランを抱きかかえ、子どものように一晩中泣きじゃくっていました。 煙となって空に昇ったチャトランをいつまでも見上げていたくーちゃんは、しばらくボーとした日を過ごしていたのですが、ある日、急に思い立ち、在りし日のチャトランの写真をせっせと集めて額に入れはじめました。そしてそれを、チャトランがいるべき場所に置いていったのです。 そんな写真を見ると、お母さんは悲しくなってつい涙ぐみ、困った顔をしました。 でも、お母さんは、ときどき写真のチャトランに話しかけています。 きのうの夜、帰宅したときも、お母さんの声が玄関口から聞こえました。 「遅くなってごめんね、チャトラン。お留守番、ありがとう」 (2006.2.10.) |