第6話 ウサギとネコと 最初、チャトランは物陰からじっと白ウサギのミミちゃんを見ていました。 ミミちゃんが何気なく振り向きました。 チャトランはピョンとうしろに跳びさがって逃げました。 そのうちチャトランは、忍び足でミミちゃんに近づこうとしはじめました。 でも、ミミちゃんがチャトランの方に顔を向けると、チャトランはすぐ逃げます。 チャトランがついにミミちゃんの近くまで行くことに成功したとき、ミミちゃんは 「なんだ、こいつは」 という風に、鼻先を子ネコに近づけました。 チャトランは飛び上がって一目散に逃げました。 そんなことばかり繰り返された末、数日後、ミミちゃんとチャトランが並んで座っている光景が初めて目撃されました。二匹が鼻と鼻をつきあわるようにして、向かい合って寝そべっているところを見た人もいます。 チャトランはミミちゃんにつきまとい、ミミちゃんのうしろをついて歩くようになりました。 ミミちゃんは耳太郎という名のれっきとしたオスですが、白い姿がいかにもやさしげで、小さな子ネコを引き連れて歩くさまは、まるで母と子のようでした。 でも、よく見ると、ミミちゃんはチャトランのことをあまり気にかけておらず、チャトランが勝手について歩いていただけなのです。 (2006.4.28.) |