第9話 お出かけと戸締まり チャトランは、かしこいネコでした。ドアでもふすまでも自分であけることができました。ふすまは前足をそろえてよいしょと開けます。ドアをあけるときは、おもいきり背伸びして前足をノブに当て、器用にくるりと回します。 こんなチャトランですから、障子をあけるのも簡単でした。でも、障子のときは誰にもほめてもらえませんでした。障子の紙を破ってしまうからです。お母さんはあきらめて、障子は破れたままにしていました。 だからチャトランは、おうちの中のどの部屋にも、たとえそこが閉まっていようとも、自分で勝手にあけて自由に入ることができました。 いつしかチャトランは、居間のガラス戸をあける技まで身につけました。前足のツメで鍵をカチャンと回し、ふすまをあける要領でガラス戸をあけてしまうのです。 この方法でチャトランは勝手に外出するようになりました。これにはみんな困ってしまいました。チャトランの外出に反対する人はいなかったのですが、お父さんとお母さんが問題にしたのは、チャトランが戸締まりをしないことです。 「お外に出るときは戸を閉めてから行きなさい」 お母さんが何度も言い聞かせたのですが、ほかのことではものわかりのよいチャトランも、この言いつけは守りませんでした。 (2006.8.10.) |