チャトランの家

 第10話 フニャーと泣いて

 きれい好きで几帳面なチャトランも、たまにはトイレをしくじるときがありました。
 そんなときは、お母さんに叱られます。
 するとチャトランは逃げます。
 もしチャトランが本気で逃げ回ったら、お母さんには捕まえられません。でもチャトランは、部屋のすみっこやテーブルの下に飛び込んで、身を縮めて捕まえられるのを待つのです。
 お母さんはチャトランをかかえ上げ、「いけません」と言って、頭をペタン、ペタンとたたきます。チャトランは「フニャー」と言ってあやまりました。

 そういう光景はめずらしいことでした。長い間、チャトランがトイレでしくじることはめったにありませんでした。
 でも、息をひきとる少し前は、チャトランはよく失敗しました。
 そのときは、お母さんはチャトランを叱りませんでした。お母さんは悲しそうにチャトランの体を撫でました。
 一方のチャトランも、叱られてもいないのに、とても悲しそうでした。
 お母さんが涙ぐむと、チャトランも「フニャー」といって泣きました。

 (2006.9.02.)


[ 掲載一覧 ]