チャトランの家

 第11話 ネコが嫌いだったお父さん

 実は、お父さんはネコが好きではありませんでした。大切に飼っていたハトをネコに殺されたとお父さんは怒っていました。何十年も前の、子どものときの話なのに、そのことを根にもっているのです。
 でも、チャトランが来てからは、お父さんのネコぎらいはあとかたもなく消えてしまいました。今では、チャトランがお母さんのおふとんの中で眠るのをくやしそうにながめています。
 チャトランは決してお父さんを嫌っているのではありません。その証拠に、お父さんがお仕事で夜おそく帰ってきたときは、ほかのみんなは寝てしまっているのに、チャトランだけはお出迎えをするのです。チャトランは気配でお父さんだとわかるのか、お父さんが玄関をあけて入ると、そこで待っています。上がり口できちんと正座し、礼儀正しく両手をついて「ニャー」とあいさつします。
 お父さんは、これがうれしくてたまらないようでした。お母さんや子どもたちに向かって「チャトランはえらい。おまえたちも見習いなさい」とよく言いました。

 (2006.9.22.)


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