チャトランの家

 第14話 緊急救援隊長

 チャトランがまだ小さいとき、木に登って降りられなくなることがよくありました。チャトランは木にしがみつき「ニャー、ニャー」と悲しげな声で助けを求めました。こういうときは、おねえちゃんの出番です。おねえちゃんはスルスルと木に登り、チャトランを抱えて降りてくるのです。
 おねえちゃんは男の子ができることはたいていできました。けんかも強く、口げんかで不利になると腕力で相手を黙らせるときもありました。でも、ふだんはやさしくて、お母さんの代わりにくーちゃんとしゅんくんのめんどうをよく見ていました。ウサギのミミちゃんのお世話もおねえちゃんの係でした。ミミちゃんはウサギにしては気が強く、多少乱暴なところがあったのは、おねえちゃんの性格が移ったのだとくーちゃんたちは思っていました。
 チャトランが騒動をひきおこしたときは、必ずおねえちゃんが出動しました。おねえちゃんは、緊急救援隊長です。
 チャトランは大きくなってトカゲをおうちに持ち帰るようになりました。トカゲをきずつけないように口で軽くくわえ、こっそり帰宅します。そして、おうちの中でトカゲを放し、逃げ出すトカゲを前足でハッシと押さえ、また口でアムアムし、また逃がし、またつかまえる、といった遊びに興じるのです。トカゲはたまったものではありません。ネコの本性発揮です。チャトランは子ども部屋でよくこれをやりました。
「ヒエー!」
 子ども部屋でくーちゃんの絶叫が上がります。なにごとかとお母さんが行くと、
「ウギャー!」
 お母さんも絶叫を放ちます。
 二人の悲鳴を聞きつけたおねえちゃんは、「またか」とうんざりした顔で子ども部屋へおもむき、
「チャーちゃん、またやったのね。いけません」
 とチャトランを叱りました。そして、かわいそうなトカゲをチャトランから取り上げ、無造作に指でつまんで外に逃がしてやるのです。

 (200612.24.)


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