チャトランの家

 第15話 ミミちゃんの家

 白ウサギのミミちゃんは自分のおうちを持っていました。夏休みの晴れた日、お父さんがノコギリでゴリゴリ、カナヅチでトントン、二日がかりで作りあげたのです。

 このウサギ小屋の製作中、しゅんくんは、できかけの小屋に入ったり、屋根のところの横木にぶらさがって遊びました。しゅんくんと押し合いへし合いして作業するのに耐えきれなくなったお父さんが「あぶないから、離れていなさい」と注意したら、しゅんくんは黙って見ているのがつまらなくなって、やがてどこかへ行ってしまいました。

 くーちゃんは、お父さんにクギを渡す係になってお手伝いしました。そのうち自分もやってみたいとお父さんにねだり、カナヅチを使わせてもらいました。お父さんがカナヅチを打つときは、コン、コン、コン、コン、と調子のよい音がするのですが、くーちゃんがやると、コツンとひとつ音がして、しばらくしてまたコツン、かぼそい音が聞こえます。ウサギ小屋の製作は遅れに遅れていきました。でも、くーちゃんは、お父さんが一服するときは、タバコやビールを買いに走りました。

 おねえちゃんは、いつものように元気よく家を飛び出してウサギ小屋の製作現場に遭遇しました。
「机を作っているの?」とおねえちゃんが尋ねました。
「ミミちゃんのおうちだよ」とお父さんが答えると、おねえちゃんは「わー、すごい」と喜び、「大きなおうちだね、じょうずだね」と、お父さんをほめました。そして、そのままスーと通り過ぎ、お友だちのところへ遊びに行ってしまいました。

 こうしてミミちゃんのおうちが出来上がりました。
 それからしばらくしてチャトランが拾われてきたのですが、チャトランはミミちゃんのような自分のおうちを作ってもらえませんでした。でもチャトランは、みんなが住んでいる人間のおうちを、自分のおうちだと思っているみたいでした。それにチャトランは、ミミちゃんのおうちにも入ることができました。ミミちゃんがその気になればチャトランを追い出すのは簡単ですが、でもミミちゃんはそうはせず、チャトランが入ることを許しました。このようにして、この立派なウサギ小屋は、いつしかミミちゃんとチャトランの共通の遊び場になりました。

 (2007.2.04.)


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