第16話 ウサギ立入禁止 ミミちゃんが自分のおうちを作ってもらえたのには、わけがあります。 今のおうちに引っ越す前は、ミミちゃんはおうちの中を自由に出入りさせてもらっていました。でも、このおうちに引っ越してからは、玄関までしか入れてもらえなくなりました。新しいおうちの中をミミちゃんがよごすのをお母さんがいやがったからです。しばらくの間、ミミちゃんは窮屈な思いで暮らしていたのですが、かわいそうに思ったお父さんが、それならミミちゃんのおうちを作ってあげよう、と言い出したのです。 ミミちゃんのおうちもできて、みんなが住むおうちもきれいなままで、お母さんは満足そうでした。ところが、ある日、お父さんの自動車を運転していたお母さんが、家の駐車場に自動車を入れるとき、門にぶつけてしまいました。その数日後、今度はもう一方の門にお母さんがまた自動車をぶつけました。おうちの左右の門も、自動車の左右の車体も、傷ついてしまいました。 「もうすぐ車も家も破壊され尽くすかもしれない」 と、お父さんがうめきました。子どもたちはみんなそろって、落ち込んでいるお母さんをなぐさめました。 「人にぶつからなくてよかったね」 「おうちも車も自分たちのものでよかったね」 「動くものは相手がよけてくれるけど、動かないものには気をつけようね」 そんなことがあってからは、お母さんはミミちゃんにやさしくなりました。ミミちゃんはときどきお母さんの目を盗んでおうちに上がりこんでいたのですが、見つかるとしかられました。でも、門と自動車が壊れてからは、ミミちゃんがおうちに上がっても少しは大目に見てもらえるようになりました。 チャトランがやってきたときは、そんなやさしいお母さんになっていたので、チャトランはずいぶんトクをしました。 (2007.3.04.) |