チャトランの家

 第17話 行方不明のネコ

 ミミちゃんもチャトランも、天気のよい日はよくお出かけしました。おうちの庭ではいつも一緒の二匹ですが、外出するときは別々で、行き先も別でした。

 ミミちゃんが夕方になっても帰ってこないとき、おねえちゃんやお母さんが探しにいくと、近所の人が「あっちの原っぱにウサギがいたよ」と教えてくれました。ミミちゃんは長い耳と真っ白な体がよく目立ち、どこにいても誰かが見つけてくれるのです。おうちの人が迎えに行くと、自分からピョンピョン跳ねて寄ってきました。だから、見つけるのも、おうちに連れて帰るのも、簡単でした。

 チャトランが帰ってこないときは、探すのが大変でした。人目を気にせず悠々と遊ぶミミちゃんとちがって、チャトランは見えない場所ばかりを選んで移動するのです。どこにいるのかさっぱりわかりません。それでも「チャトラーン」と何度も呼べば、どこからともなく現れます。いくら呼んでも姿を現さないときは、おうちのみんながあちこちに散らばって、大きな声でチャトランの名前を呼び続けます。そうしているうちに、どこかでその声を聞きつけて、やっと帰ってくるのです。

 いくら探しても、何時間呼びかけても、チャトランが帰ってこない夜がありました。交通事故にでもあったのではないかと、お母さんは涙声になってしまいました。悲嘆にくれたお母さんが「子どもはもう寝なさい」と言って押入からおふとんを出そうとすると、何と、おふとんの中にチャトランがいました。みんなが必死になって夜の町を探しまわっているとき、当のチャトランは押入の中でスヤスヤ寝ていたのです。
 このことがあってからは、チャトランが帰ってこないときは、最初におうちの中を探すようになりました。押入の中とか、本棚の一番上とか、部屋のすみっこのカーテンの裏とか、買い物袋の中とか、お風呂のフタの上とか、思いもよらぬややこしいところでチャトランはよく寝ていますから。

 (2007.4.19.)


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