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チャトランの家

 第18話 野生児ミミちゃん

 ウサギのミミちゃんは普段はおうちの庭で遊んでいました。庭からは自由に出られます。だから気が向いたら近所の原っぱや公園に行くのです。よその乱暴なイヌやネコに出くわしたとき、ミミちゃんがどうやって災難を避けていたのかよくわかりません。でも、具合が悪かった片方の目はいつのまにか治っていたし、それにミミちゃんが本気になったらものすごく速く走ることをお父さんとお母さんは知っていましたから、外出を大目に見ていたのかもしれません。

 子どもたちは、ミミちゃんのことを心配していませんでした。ミミちゃんは強いと思っていたからです。可憐な姿からは想像しにくいのですが、ウサギの歯やツメがとんでもなく鋭いということを、子どもたちは身をもって体験していました。
 ミミちゃんの食事のとき、ニンジンを指先で持って食べさせることがよくありました。ニンジンがだんだん短くなっていき、ミミちゃんの口に指が近づいていきます。そして最後に、うっかりしていると、ミミちゃんは指をかじりました。これが痛いのなんのって、お父さんでさえ悲鳴をあげました。
 ミミちゃんをだっこしているときは、ミミちゃんも前足で抱きついてきます。ところが、ウサギのツメはネコのようには引っ込みません。だから油断すると、だっこしている人の腕にツメを立てるのです。しゅんくんも、くーちゃんも、もちろんおねえちゃんも、そしてお父さんも、手や腕によく生傷をもらっていました。
 ましてやミミちゃんが怒って暴れたら、それは凄いことになりました。チャトランなんかよりよっぽどこわいのです。チャトランがミミちゃんの家来になったのは当たり前だと子どもたちがごく自然に納得したのはこのためです。

 (2007.5.16.)


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