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第20話 ミミちゃんの両親のこと
ミミちゃんがまちがいなくこの世にいた証拠として、ミミちゃんの両親のことを書き添えておきたいと思います。公園に捨てられていたかわいそうなチャトランとちがって、ミミちゃんは小学校で飼われていましたから、親のこともわかるのです。
おねえちゃんの小学校には、四匹のウサギがいました。白ウサギのユキちゃん。黒ウサギのクロちゃん。白黒まだらのマルメちゃん。お尻だけ黒いモモちゃんです。
純白のユキちゃんとお尻以外は白いモモちゃんは、性格はおしとやかだし、見た目も白くて可憐です。子どもたちは、この二匹はメスだろうと思っていました。これに対して黒系統の二匹は、つまり真っ黒なクロちゃんと白黒まだらのマルメちゃんは、乱暴者でした。だから、この二匹はオスです。
最初に赤ちゃんを産んだのは、白黒まだらのマルメちゃんでした。マルメちゃんは実はメスだったのです。子ウサギのお父さんはきっとクロちゃんだろうとみんな思っていました。ところが、それからしばらくして、そのクロちゃんが赤ちゃんを産みました。クロちゃんも実はメスだったのです。
「そうか、ウサギはおしとやかなのがオスで、乱暴者がメスなのだ」
子どもたちは、そう思いました。当初考えていたオスとメスが実は逆だったのです。白系統のユキちゃんとモモちゃんが、どちらがどちらかわからないけれど、黒系統のクロちゃんとマルメちゃんの夫になったのだ、と無邪気に考えていました。
それからしばらくして、なんと、今度はモモちゃんが赤ちゃんを産みました。
ウサギは四匹しかいません。そのうちの三匹が赤ちゃんを産んだのです。ここに至って、子ども心にも事態は明らかになりました。残りの一匹であるユキちゃんだけがオスなのです。マルメちゃん、クロちゃん、モモちゃんの三匹が産んだ子ウサギたちすべての父親はユキちゃんであり、ユキちゃんは三匹のウサギの夫になっていたのです。
「ひどい!」
「浮気者!」
「一番おしとやかで、きれいなのに・・・・」
子どもたちの非難や困惑の声とは別に、先生も困りました。ウサギが増えすぎたのです。しかも、放っておけば、ユキちゃんは次々と三人の妻たちに子どもを産ませ続けるでしょう。先生は、ユキちゃんを野原に放すことにしました。
さて、ユキちゃんはいなくなったけれど、ユキちゃんの子どもたちでウサギ小屋はいっぱいになっていました。そのうちの一匹を、目にケガをしてウサギ小屋では暮らせない純白の子ウサギを、お人好しのおねえちゃんがおうちに連れて帰りました。それがミミちゃんだったのです。
(2007.7.03.)
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