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チャトランの家



 第22話 ひとりぼっちのネコ

 ミミちゃんがいなくなってから、チャトランがひとりぼっちでポツンと庭にいるところをよく見かけました。以前は、庭に出ればいつもミミちゃんがいました。ミミちゃんの後ろをついて歩き、いくら無視されても「遊ぼう、遊ぼう」とミミちゃんにじゃれついていたチャトランです。そのミミちゃんはもういないのだということを、チャトランは納得していないようでした。
 おうちに誰かいるときは、チャトランは何かにつけそばに寄ってきました。相手がくーちゃんやおねえちゃんなら、足元で顔をスリスリしたり膝に乗ったりしました。相手がしゅんくんやお父さんなら、1メートルほど離れたところで寝そべりました。見える場所にいたいのです。でも、みんな外出して誰もいなくなるときは、チャトランはとても悲しそうな声で鳴きました。
 チャトランがこんなにさびしがりやだとは、みんなは知りませんでした。でも、考えてみれば、チャトランはひとりぼっちになったことがないのです。チャトランがこのおうちに来たとき、おうちにはすでにミミちゃんがいました。人間が全員外出しても、おうちにはミミちゃんがいました。ミミちゃんが死んだ後、チャトランは初めてひとりぼっちの経験をすることになったのです。いえ、初めてというわけではありません。幼くして公園に捨てられた経験がチャトランにはあります。あのときの孤独を、チャトランは思いだしたのでしょうか。

 (2007.9.05.)


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