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第27話 夜の運動会
チャトランは、おうちの中で運動会をしました。ひとりで走り回るのです。夜中によく走っていました。二階でバタバタバタ音がすれば、それはチャトランの運動会です。
みんなが居間にいる夜、運動会の音が二階から聞こえてきました。
「おっ、きょうも元気にやってるな」
「えっ、チャーちゃんは私の膝の上だよ」
「なにっ? じゃ、二階で走ってるのは誰だ?」
全員沈黙。
「おい、誰か二階を見てきなさい」
「お父さんが行ってよ」
「お父さんは新聞を読むのに忙しいのだ」
などと尻込みしても、結局お父さんが二階に上がりました。でも、何も発見できませんでした。二階のどの部屋も静まりかえっていたのです。
この不思議な音は、ときどき聞こえました。だんだん慣れてきます。子ども部屋も寝る部屋も二階にありますが、人が二階にいるときは何も起こらないということもわかってきました。チャトラン以外の何者かが二階を走る音が聞こえたときは、誰もが一瞬「あっ」という顔をし、すぐ後には引きつったような笑いを浮かべつつ、「まただね。きっとアレだね」と自分を納得させるのです。
運動会の音がすると、チャトランが走っているのか、例のアレなのか、よくわからなくなりましたが、聞き流すほかありませんでした。
不思議ですが、本当の話です。
(2008.2.5.)
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