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第29話 お風呂
チャトランがお風呂場に行く理由は三つありました。
ひとつ目は、お風呂の暖かいフタの上で寝るときです。
ふたつ目は、お風呂場の水を飲むときです。チャトランは、お茶碗に入れた水道の水よりも、お風呂場の床タイルの水をなめる方が好きでした。暗いお風呂場で床を舐めるチャトランの姿はちょっと不気味です。
「チャトランの前世は妖怪“あかなめ”にちがいない」
と、子どもたちはヒソヒソ語り合いました。
お風呂場に行く三つ目の理由は、入浴です。このときは、チャトラン自身の意志に反してお風呂場に引っぱり込まれました。チャトランをお風呂に入れるのは、くーちゃんの係です。泣き叫ぶチャトランを容赦なく洗うという芸当はくーちゃんにしかできません。
体を洗ってもらった後のチャトランは、濡れそぼって毛が焦げ茶色に変色し、フワフワの体も貧相に痩せこけて見えました。タオルでゴシゴシ体をふいてもらうときは、これで終わりだとチャトランにもわかるようで、もう暴れることもなく、「フニャー」と言って身をまかせるのです。
(2008.4.01.)
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