ギリシャ随想シリーズ (10)ギリシャの由来(番外編)

 古代ローマの都市グラキア(Graecia)の英語読み「グラシャ」又は
 「グリーシャ」から「ギリシャ」という日本語が生まれたのかもしれない、
 という前章の話はおもしろいですね。
 というのは、日本語表記の揺れがうまく説明できるからです。
 普通は「ギリシャ」と言いますが、「ギリシア」と書く人もいる。
 尻尾が「シャ」になったり「シア」になったりするのは、Graeciaの「-cia」に
 対応しているのかもしれません。
 英語はこれを「シャ」と発音し、ラテン系言語では「シア」になるからです。

 幕末維新のころ、日本に来た外国人が「グリース」だの「グラシャ」だの
 「グラシア」だのと、それぞれのお国訛りで発音しているのを聞いた日本人が、
 それを口から口へと伝えているうちに「ギリシャ」あるいは「ギリシア」になった
 というのは、十分あり得る話です。
 なにしろイングリッシュ(English)を「エゲレス」と書き写し、
 ついには「イギリス」にしてしまったお国柄ですから。

 そのことからの連想で、起源説をもうひとつ。
 これは素人の思いつきです。
 Englishは形容詞です。「イギリス人」という意味もあります。
 日本ではこれが国名に転化した。
 そこで「ギリシャの」あるいは「ギリシャ人」を意味する英語は何かというと、
 普通はGreek(グリーク)を思い浮かべますが、もうひとつ、古い単語がある。
 Grecian(グリシャン)。
 これを日本人が聞いて「グリシャン」→「グリシャ」→「ギリシャ」。

 こういう探検はおもしろいですね。
 インドネシアのジャカルタ経由で渡来した新種のイモを「ジャカルタイモ」と
 呼ぼうとしたが、日本人は舌がもつれてどうしても言えず、
 「ジャガタライモ」にしてしまい、
 ついには「ジャガイモ」になった話を思い出します。
 こと外来語の発音に関しては、我々は相当いい加減な国民ですな。

 (2004.6.5)

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