ギリシャ随想シリーズ (11)古代ギリシャの女性たち(1)

 古代ギリシャは家父長制社会である。
 民主政が定着した頃のアテネにおける女性の地位は最低だったと言われている。
 「民主政」といえども女性に選挙権がなかったのは言うまでもない。
 「沈黙と寡言が女の飾り」と、時の最高権力者ペリクレスは演説の中で述べている。
 一般的女性の生き方は結婚して子供を生むこと以外想定されなかった。
 女性たちは世間に出さず箱入り娘として育てられ、14、5歳で結婚させられた。
 結婚相手は普通30歳前後で、父親が家の釣り合いや持参金の額などを考慮して決めた。
 これは親同士の交渉によるもので、見合い結婚とも言えないものである。
 男性にとっては結婚の目的は家を継ぐための嫡出子を得ることであった。
 というのも、ギリシャでは家を存続させることは市民の義務であったからである。
 結婚後は家事育児を一切妻に任せ、外に妾や愛人を持つ者も珍しくはなかった。
 「我々は快楽のために娼婦を、身体を日々世話してもらうために妾を、
 嫡出子を生ませ、家庭を誠実に監督してもらうために妻を持つ」という言葉が残っている。
 女性たちがこれほどまでに物理的にも精神的にも生きにくかった社会は、
 西洋の歴史上、他に類を見ないとも言われている。
 とはいえ、当時の女性の地位が実際にはどうであったかは詳しくはわかっておらず、
 男たちの言いたい放題は、実は見栄であったり、見果てぬ夢であったのではないか、
 という者もいる。

 (2004.6.10)

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