ギリシャ随想シリーズ (14)ミノア文明

 ギリシャの歴史は今から4千年ほど前に遡る。
 紀元前2千年頃、エーゲ海の南部に浮かぶクレタ島でミノア文明が誕生した。
 クレタ文明とも呼ばれるこの文明は、開放的かつ穏健的性格のものであり、
 強権的な支配者もいず、戦争のための城壁もなく、人々は海の恵みのもと、
 平和で芸術的な生活を営んでいた。

 ひとつの伝説がある。アテネはこのミノア王国に毎年人身御供を送っていた。
 彼らは迷宮に棲む怪物ミノタウロスの餌食になっていた。
 彼らを救うためアテネの英雄テセウスがその一行に潜り込み、そのテセウスを
 一目見て、ミノアの王女アリアドネが恋に落ち、彼女は赤い糸玉をテセウスに
 渡し、テセウスは怪物ミノタウロスを見事に倒した後、赤い糸をたどって
 アリアドネの待つ迷宮の入り口まで戻ってきた、という物語である。

 この「ミノタウロスの迷宮」と呼ばれるものが、そうとしか考えられない
 地下構造物が、何とクレタ島の王宮跡で発掘されたのである。
 神話や伝説を単なる空想の産物とあなどってはいけない。

 この文明は紀元前15世紀頃に突如として崩壊した。
 その終焉の原因は諸説あり、いまだ定まっていない。
 最も有力なのは、ギリシャ本土でこの頃勢力を強めていたミケーネ文明の
 侵略によるものだという説であるが、他にも地震や火山の爆発など
 自然災害に崩壊の原因を帰す考えも根強い。
 ギリシャ史の謎の一つである。

 (2004.7.7)

ギリシャ随想シリーズ目次