ギリシャ随想シリーズ (16)暗黒時代

 紀元前12世紀のミケーネ文明崩壊後、
 ギリシャは「暗黒時代」と呼ばれる時期に入り、
 それは400年続いた。
 この時代については史料が全くといっていいほど残っておらず、
 詳しいことはほとんどわかっていない。
 「暗黒時代」の「暗黒」とは、
 闇のように何もわからないという意味であり、
 衰退や絶望を意味するのではない。
 それにしても、この時期に限って文字史料はおろか、
 壺とか工芸品とか図像史料すらほとんど残っていないというのは、
 そのこと自体が大きな謎である。
 しかし、この時代の末期にポリス(都市国家)が出現し、
 ギリシャ文字が発明され、
 かの有名なホメロスの二大叙事詩が誕生したことなどを思えば、
 「暗黒時代」はその後のギリシャの発展を決定づけた
 非常に重要な胎動の時期であったといえよう。

 (2004.7.20)

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