ギリシャ随想シリーズ (4)バルバロイ

 古代のギリシャ人は、異民族を「バルバロイ」と呼んでいた。
 この語に由来する英語の「バーバリアン」は普通野蛮人を意味しているが、
 ギリシャ語でバルバロイとは本来「外国語を話す者」のことだった。
 ギリシャ人たちの耳には、ギリシャ語以外の言葉はバルバルという
 理解不能な音に聞こえたため、そのような言語を話す者たちを
 「バルバロイ」、すなわち「バルバルという言葉を話す者」と呼んだのである。

 「バルバロイ」の意味が「バーバリアン」に転化したのは、自分が属する
 文明に同化しない民を野蛮とみなすに至ったことを示している。
 中華文明が四方の異族を東夷・西戎・北狄・南蛮と蔑称したのも
 これと同じである。

 以上は古代の話であるが、異質の民を理解不能とするか、
 理解しようとするか、これは現代につながるテーマでもある。

 (2004年3月27日)

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