ハマっ子ノスタルジー
『路地裏の遊び』 (第3話) 広瀬裕敏 生家に今も住んでいる。 その町の入り口には「濱の日本橋」という気恥ずかしいアーケードがかかっており、料亭が軒をつらねていた。路地を曲がると引退した芸者さんの住まいとおぼしきしもた家があった。 そんな通りの一番奥に場違いな町工場があり、その二階に住んでいた。 母が前の住まいの磯子の小学校に私を通わせたこともあって、近所に同世代の友達はなかなかできなかった。 小学校3年生のとき、近所の魚屋さんが経営するそろばん塾に通うことになった。やがて友達もでき、塾が終わって暗くなるまで近くの町内会館の前の小さなスペースで遊ぶようになった。公園など鎌倉街道を渡ったお三の宮までなかった。 あの時熱中した遊びはなんというのだろう。チームを二つに分け、守備側は壁を背にして立った子を起点にして、次の子が起点の子の股に頭をつっこみ、さらに次の子が頭をつっこんで橋を造る。攻撃側は一人一人その橋に飛び乗って、全員飛び乗った後、最後に飛び乗った子が守備側の起点の子とジャンケンをして、負けたら攻守交替、勝ったり途中で橋は壊れたらそのまま攻撃を続けるというルールである。 子供の跳躍では飛び乗る距離も限られており、人数が多くなるとある場所では一人で四人くらいの体重を支えることになり、かなり刺激のある男の子の遊びであった。 ただ中に下町のおきゃんな女の子が一人二人混じっていた。 守備側でひとつ年上の女の子の後ろになってどきどきしていたら、彼女は振り向いて、 「あまり頭つっこまないでよ」 といった。 かわいい子だった。スカートでそうした遊びをするのも無理がある。私は彼女の尻に頭を触れることもできず、当然のごとく私のところで橋はつぶれた。 やがて危険すぎるということで、大人たちからこの遊びは禁止された。 |
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