「横浜の散歩コース案内」
(第82話)
別に歩くのは好きではない。
中学高校までは、物理的にも精神的にも散歩する余裕も無かった。
幼い野心と現状に対する鬱々とした不満で、歩いていても町並みを楽しむ余裕も無かった。
しいて転機があったとすれば、酒を覚えて東京で呑みはじめた浪人から大学生時代のことである。
深夜桜木町にたどりついて、当然バスも終わっており、二三十分かけて歩いて帰るのが日課になった。
最初は絡まれないか緊張して歩いていたが、そのうち街並みを楽しめるようになった。
伊勢佐木町はほとんどがシャッターを下ろしており、わずかにタックスフリーショップが灯りをともしていた。安さにつられて店の人に声をかけたら、パスポートを持っていなければ買えないと言われた。タックスフリーの意味もまだ知らなかった。
漢方薬店、通称「へび屋」が商店街のちょうど中ほどにあり、いい道標になった。ショーウィンドウのヘビのホルマリン漬けを見て、友人に精力剤の解説を知ったかぶりしてやった。
歩くことが面白い発見であることが段々わかってきた。昼間も歩いてみようという気になった。
以下は私の推薦する横浜の散歩コースである。みなとみらいなど新しい町は無視している。
石川町南口から元町商店街経由港の見える丘公園、山手通りのデート定番コース。
丘公園から鷲津坂方面に行く道も面白い。帰りは本牧通りからバスで戻るしかない。また山手通りをひたすらまっすぐ行って、山元町経由根岸台の競馬場跡まで行くこともできる。ただ競馬場跡は行き止まりで、先は米軍キャンプである。
関内駅南口から横浜公園、中華街のコース。
中華街には石川町北口からではなく、関内から横浜スタジアムの脇を通って入ることをオススメする。
桜木町から海岸通、大桟橋、山下公園のコース。
港ヨコハマの真髄である。大桟橋はリニューアルしたあとまだ私も行っていない。工事中に車で行って追い出された。
以上の3コースはまとめることもできる。夏場は私は遠慮したいが。
桜木町から大岡川沿いをひたすら上るコース。ほぼ京浜急行と並行しているので疲れたところでやめればよい。大岡川もきれいになった。黄金町の「チョイの間」街もなくなって、デイープなヨコハマを垣間見れる散歩コースになった。桜のシーズンは絶品である。
桜木町から野毛、野毛山公園(動物園)、かもん山の周遊コース。
紅葉坂からみなとみらいに抜けられる。
この2コースは観光化されていない。
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