蟹満寺縁起

    

                 (霊験あらたかなお守りと土鈴)


普門山蟹満寺(真言宗)

〒619-0201 京都府相楽郡山城町綺田(かばた)浜36
電話:0774-86-2577

 奈良朝以前、秦氏の一族秦和賀によって建立され、後に行基菩薩の
関与により民衆の厚い信仰を集めてきました。また、今昔物語集巻十六
第十六話等数多くの古書に創建にまつわる有名な「蟹満寺縁起」が記
され、仏教説話として広く世間に紹介されています。


蟹満寺縁起
 昔々、信心深い夫婦と一人娘が仲良く住んでおりました。
 ある日のこと、村人がたくさんの蟹を捕えて食べようとしているのをみた
娘は、持っていたお金を渡して蟹を譲り受けると、草むらへ逃がしてやりま
した。
 また、娘の父が田を耕していると、蛇が蛙を呑もうとしていました。何とか
蛙を助けてやろうと思った父は、蛇に向かって言いました。
 「もし、おまえがその蛙を放してやってくれたら、娘の婿にしてやるのに
なあ。」
 すると、不思議なことに、蛇は蛙を放し、どこへともなく姿を消しました。
 この後、咄嗟についた嘘を悔いた父は、仕事も手につかなくなり、家へ
帰ると、娘にこの話を打ち明けました。
 父親が心配したとおり、その夜、衣冠を着けた男が門前に現れ、昼間の
約束を守ってくれるよう迫りました。困った父親は、嫁入りの支度を理由
に、三日後に来るよう男に言って帰しました。しかし、何もできぬまま三日
が過ぎ、遂に約束の日になりました。
 雨戸を堅く閉ざして約束を守ろうとしない父親に腹を立てた男は、本性を
現し、蛇の姿となって荒れ狂います。
 娘はひたすらお経を唱え、娘の父母は恐ろしさの余り、身を縮めていまし
た。すると、光り輝く観音さまが現れ、自分を信じれば、この危難は乗り越
えられると告げました。
 まもなく、辺りは静まりました。夜が明け、戸外に出てみると、鋏で寸断さ
れた大蛇と無数の蟹の死骸が残されていました。
 親子は観音さまに感謝し、娘の身代わりとなったたくさんの蟹と哀れな蛇
の霊を弔うためにお堂を建て、観音さまを祀りました。
 毎年、四月十八日、この縁起に因んで蟹供養放生会が行われています。
 蟹満寺の観音さまは身代わり観音とされ、厄除け、災難除けの本尊とし
て、古くから人々に信仰されています。

 (それにしても、蛇に喰われそうになったところを娘の父親に助けてもらっ
た蛙は、一体どうしたんでしょうね。)