放課後は
さくら野貿易
放課後のページへ
ラーゲリの歌声


 第14話 思い出のカルトーシュカ

 「カルトーシュカ」という課外活動があった。「カルトーシュカ」とはロシア語でジャガイモのことだが、生徒が農作物の収穫にかり出されることをも意味していた。秋の収穫時期、学校から泊まりがけで労働奉仕に行くのである。
 私たちは、モスクワ近郊のソフホーズ(国営農場)へ学年全員で行った。見渡す限り畑の中、砂糖大根(ビート)を抜く作業を2日間やった。もちろん手作業である。抜いた大根を積み重ねて山にしていくのだが、一本の畝が恐ろしく長い。抜いても抜いても畑の端にたどり着けない。抜く作業を終えた頃トラックが来て、その荷台に大根を放り投げて乗せる。最後は私たち生徒が荷台に乗って、つまり大根の上に乗って、宿舎(バラック)に帰った。肉体労働で汗を流してすがすがしく、高いトラックの荷台に揺られながら見る畑の景色も目に心地よかった。誰かがギターを弾いていて、暮れていく夕焼けがきれいだった。
 余談だが、このときの私の働きぶりが先生方の目にとまり、「勤労英雄」だったか何だったか忘れたが、賞状をもらった。学業で賞状はもらえないのか、と親は思ったことであろう。


[執筆者紹介] [ 掲載一覧 ]