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ラーゲリの歌声


 第22話 秘密の特技

 学校では、週一度軍事教練の授業があった。聞くところによると、ソ連の他の現地学校へ通っていた日本人は、軍事機密だからと、その時間は閉め出されていたらしい。私は皆と一緒にこの授業を受けた。
 この時間はよく行進させられた。テレビで赤の広場の軍事行進を見たことある人もいらっしゃるでしょう。出した足の膝を真っ直ぐにのばしたまま、足を地面につけて勢いよく進み、足と反対側の腕は胸の前に直角に曲げて大きく振る。学校の回りを行進し終わると、整列して一、二、三と一人づつ端から声を張り上げ、参加した人数を数える。日本と違って背の高い順に並ぶ。私は女子生徒の中で背の高さが4番目だった。ロシア語で4番目というのは「チェトビョールティ」といいにくいので、いつも緊張した。
 カラーシニコフ銃の分解や組み立ての練習もした。ストップウオッチをもって何秒で分解と組み立てができるかというテストもあった。クラスで射撃場へ行き、腹這いになって撃った。雪の中、野外戦闘訓練もやった。匍匐前進をしたり、木の切れっ端を手榴弾と称して投げたり、火の上を飛び越す訓練もした。
 何かの雑談の折り、この話を社長にしたら、それ以後、彼は私に逆らわなくなった。


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