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さくら野貿易
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ラーゲリの歌声


 第39話 ボトルキープ

 来日したロシア人のお客さんと一緒に、食事の後スナックなどへ行くことがある。カウンターの向こうには、名札のついたボトルが並んでいる。私が日本のボトルキープのシステムを説明すると、彼らは一様に信じられないという顔をする。一度開けたボトルを最後まで飲まないなんて、彼らの辞書にはないからだ。
 ロシアへ出張した際、だいたいは取引先の会議室で打ち合わせをするのだが、時には我々のホテルの部屋に彼らの方から訪ねてくることがある。その場合、打ち合わせだけで終わることはない。ロシア人は、提げてきたアタッシュケースからニコニコとウオッカの瓶を出して、乾杯が始まる。そんなときは飲みたくないなんて断ることはできない。なんせ相手は取引先で、今後仲良くつきあっていかなければならないのだから。
 仕方なく上司達と一緒に飲み始めるが、そんなに昼間から飲みたい気分ではない。大したつまみもないし。。。でも瓶の残りがわずかになると、早く終わらせようと、頑張って少しピッチを上げた。ボトルがカラになれば、彼も帰り、少し休む時間もできるだろうとタカをくくったのだが、甘かった。瓶が空になると、またアタッシュケースからニコニコとウオッカを出した。あーあ。二本目はあきらめて、腰を据えてお相手した。ボトルキープのシステムがあればなあ。


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