第45話 イクラとキャビア
ロシア語で魚卵を「イクラ」と言う。日本でいうイクラ(サケマスの卵)は「赤いイクラ」、キャビア(チョウザメの卵)は「黒いイクラ」と区別する。
モスクワのレストランで注文すると、切ったパン、バター、イクラとキャビアがそれぞれ小さな皿に盛られて運ばれてくる。パンにバターを塗り、その上にイクラかキャビアを、下のバターが見えないくらい、ぎっしり乗せて食べる。だいたいバターは冷たいので、薄く伸ばせない。厚く塗ったバターにどっさり乗ったイクラ。今考えると一体何カロリーだったのかと恐くなる。そのイクラとキャビアのカナッペを数え切れないほど食べたのだから。
黒海近くのアゾフ海へ出張したとき、チョウザメの養殖場を見学したことがある。そこではもちろん新鮮なキャビアが食べ放題。大きなスプーンですくって好きなだけ食べていいと言われた。同行したロシア人も嬉々としてもりもり食べていた。それ以降あまりキャビアに食指が動かない。きっともう一生分食べたのだろう。
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