第49話 雨の日
モスクワの学校に通っていた頃、子供だけでなく大人も雨の日に傘をささなかった。みんな傘をもっていなかったのだ。だからナイロンのスカーフを頭に巻いたりもしたが、だいたい皆、濡れるままに雨の中を歩いていた。雨の日に折り畳み傘を取り出した私にクラスメイトは目を見張っていた。
ソ連では公共料金が大変安かった。市内電話、水道、ガス、暖房は安い基本料金を払えば使い放題だったが、電気代だけは使用量に応じて徴収された。そういう事情もあってロシア人は暗くてもなかなか電灯をつけなかった。雨の日の授業は、教室が暗くても電灯がつくことはほとんどなかった。
【画像出典】 ©The State Tretyakov Gallary, Moscow, Russia
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