現代徒然草(2)ふきのとう |
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雪が降ると、すなわち春の雪が降ると、ふきのとうをさがして庭を廻る。家族はそれぞれが穴場をもっている。 最初の二つ三つは、とうふのみそ汁にぱっと散らす。この味を理解できない者とは、本当の付き合いは出来ない。 料理本のレシピでは、ふきのとうの味噌あえというものが出てくる。感心しない。 私は、ふきのとうは、薄いしょう油味で煮つめ、佃煮のようにしたものが好きだ。 「焼酎は飲んだらあかん」 母の声に私は「ハイ」と答える。 「ウィスキーにし」 「ハイ、ハイ」 母の年代は、焼酎に対して特別な印象がある。極道のシンナー。 ぐいのみに、ウィスキーを静かに注ぎ、ふきのとうの佃煮を口に運ぶ。春が来たのだと思う。
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