現代徒然草(2)ふきのとう



 雪が降ると、すなわち春の雪が降ると、ふきのとうをさがして庭を廻る。家族はそれぞれが穴場をもっている。
 最初の二つ三つは、とうふのみそ汁にぱっと散らす。この味を理解できない者とは、本当の付き合いは出来ない。
 料理本のレシピでは、ふきのとうの味噌あえというものが出てくる。感心しない。
 私は、ふきのとうは、薄いしょう油味で煮つめ、佃煮のようにしたものが好きだ。
「焼酎は飲んだらあかん」
 母の声に私は「ハイ」と答える。
「ウィスキーにし」
「ハイ、ハイ」
 母の年代は、焼酎に対して特別な印象がある。極道のシンナー。
 ぐいのみに、ウィスキーを静かに注ぎ、ふきのとうの佃煮を口に運ぶ。春が来たのだと思う。
(武兵衛)
2003.03.03.

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