現代徒然草(6)





 眠れぬ夜

 家の前に、小さな空き地がある。
 どうにかしなければと思うと、眠れない夜もある。
 同じ町内の年寄りから、
「ミカンを植えたらどうか。ミカン狩りをしてはどうか」
 という提案があった。
 私は丁重に心の中で断った。
 私は照手桃をしかるべき場所に植えたい。
 花が咲き、実が成る。一本で実が成るということは、果樹を考えるとき、
とても大事なことだ。
 柿の苗木の情報も入手している。実はすばらしい。
 さらに秋の紅葉は他に類をみない。
 プルーンは放任で育ててみたい。
 空き地の中央には桜だ。桐の木のぼうとした花、落ちてくる重い葉も
すてがたい。
 三つ葉ツツジは信念として確保したい。
 春、葉の出る前に紫の花が咲く。
 レンゲツツジも欲しい。五葉ツツジは人目にふれずそっと咲かせて
やりたい。
 白い花のいちはつも欲しい。ミソハギも、しゃくなげも。
 空き地の端を開拓し、堆肥を入れ、家ぶきやミョウガが自生すれば
どんなにうれしいだろう。
 山吹やれんぎょう、こでまり、ゆきやなぎのひとまとまりも欲しい。
 家の前に、小さな空き地がある。
 考えると眠れないことがある。

 2003.4.18.
 武兵衛

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