現代徒然草(8)




 安芸の鳥居

 安芸の宮島の大鳥居は、楠木(クスノキ)で出来ている。
 この鳥居を陸から見ると、向かって右側の柱は、基礎部分が細く、その上
が少し太くなっている。カンナをかけずに、切り出したまま使ったからだ。
 楠木は巨樹として残りやすい。
 大鳥居を立て替える場合、必要な楠木は充分ある。
 しかし、神社の境内にある楠木は、ほとんどすべて、しめ縄がかけられ、
神木となっている。氏子たちが伐採を認めるだろうか。
 公共用地、民有地の楠木の巨樹は、ほとんどすべて、天然記念物に指定
されている。伐採をお願いできるだろか。
 そのことに気づいた宮島の商店街の人たち、氏子たち、保存会の人たち
などが、なんびとをも説得し得る結論に到達した。
 楠木の苗木を植えよう。
 神社の裏山は元々神域である。
 百年も二百年も苗木を植えてこなかった。
 その空白に日本の歴史が重なる。
 二百年後、その苗木が、柱として海の中に立ちますように。

 2003.5.11.
 武兵衛

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